【野宿者の人権問題】注目の新支援モデル「ハウジングファースト」とは何か

 こんにちは!「野宿者の人権問題」分科会です。

 

 「野宿者」とは、住む家がなく公園や河川敷など野外で寝起きをしている人のことであり、一般的には「ホームレス」と呼称されることが多いかと思います。
ただ、欧米では、“homeless”は安定的な住居を持たない状態を広く含む概念として用いられることがあり、このような広義の「ホームレス」概念は、「住まいの貧困(ハウジング・プア)」の問題を広範に把握するための概念として、有用性が高いものと考えます。

 

 その上で、当分科会は、近年特に野宿者(狭義の「ホームレス」状態にある人)の方々について深刻な人権問題が相次いで発生していることを受け、「野宿者の人権問題」というテーマ設定を行いました。

 

 4地方4名の司法修習生から成る私たちのグループは、本番に向けた準備を進めつつ、隔週で課題図書を用いた学習会を行っています。
 現在の課題図書は、稲葉剛=小川芳範=森川すいめい編『ハウジングファースト』(山吹書店)です。この本には、様々な団体で野宿者の支援に携わっている方々による論考が10本以上掲載されています。

 

 日本の行政による野宿者支援施策の多くは、「ステップアップ方式」と呼ばれる形で行われています。これは、野宿者は精神疾患を抱えている人も多く、自立的な生活を送るのが難しい人々だという前提に立ち、まずは施設において治療や訓練を受けながらの生活をさせ、一人暮らしに必要な能力を有するものと監督者が認めて初めて、アパートなどの個別住居で生活できるようにするというものです。

 

 これと対照的な考え方が、この本の題名にもなっている「ハウジングファースト」です。1990年代のアメリカで生まれたこの支援モデルは、安全でプライバシーが守られる住まいを「人権」として捉え、それは精神科医療にかかることや断酒することと引換えに与えられるものではなく、本人のニーズに応じて真っ先に提供されるべきものと考えます。

 

 ステップアップ方式では、負担を伴う施設生活に当事者が耐えられず、再び路上生活に戻ってしまうということがしばしばあります。他方、ハウジングファースト方式では、まず安定した住まいが与えられることにより、日々の生活における当事者の身体的・精神的な負担が軽減されるという効果があり、そこから様々な困難に向き合い、対処していく余裕が生まれます。実際にも、ハウジングファースト方式は、住宅維持率、精神科病院への入院期間、支援費用といったアウトカム(結果)において、ステップアップ方式より優れていることを明らかにした実証的研究が存在します。

 

 住まいは「贅沢」でも「ご褒美」でもなく、当たり前の「人権」。このような認識こそが、野宿者支援政策を成功に導く秘訣といえそうです。

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