2020年6月30日
私たちの分科会では,最近になって,稲葉剛さんの「閉ざされた扉をこじ開ける 排除と貧困に抗うソーシャルアクション」を読み始めました。2冊目の課題図書になります。
先日開催した学習会では,本を読んだ感想や疑問点などについて話し合いました。
この本では,野宿者の方が様々な場面で「排除」されている現状が紹介されています。
一つの例として,オリンピックがあります。オリンピックが契機となって,路上生活者が排除されるという現象が世界各国で発生しているという指摘です。
オリンピックを開催するにあたり,開催都市の納税者が金銭的負担を強いられたり,環境への負荷が増大したり,セキュリティ強化という名目でプライバシー侵害が起こったり,さらには貧困層が排除されるといった問題が生じる,といった批判がなされているのです。
そのような状況は,「祝賀資本主義」とも表現されているそうです。強烈な言葉ですよね。分科会の中でも,本を読むまでこの言葉を知らなかった人が多かったです。
オリンピックが開催されること自体は喜ばしいことだと思います。ただ,その華やかさの裏で,様々な問題や困っている人たちの存在が見過ごされていないか,という視点も大切にしたいと思いました。
野宿者の方が「排除」される場面は,他にもあります。
2019年10月に関東地方に台風19号が上陸した際,東京都台東区では,野宿者の方が避難所の受入れを断られた,という出来事を皆さんはご存知でしょうか。この本では,当時の事実経過についても紹介されています。
SNSなどでは,このような行政の「排除」を肯定する意見もあったそうです。
野宿者の方に限らず,立場の弱い人たちが「排除」されている現状は,思っているより根深い問題なのかもしれません。
このブログを書いている私自身,野宿生活をしたことはありません。野宿者の方が実際にどのような生活を送っているのか,どのようなことで困っているのかは,理解できていない部分もあります。ただ,こうやって本を読んだり,人の話を聞いたりして勉強し,想像することはできます。
何より,「ひとりの人間」そして「社会の一員」であるという意味では,私と野宿者の方は何も変わらないと考えています。
誰も「排除」されることなく,穏やかに生活できる社会であってほしいですし,そういう社会にしていかなければならないなと思いました。
本番に向けて,準備はもちろんですが,このような学習会を通じての学びも,引き続き深めていきたいと思います。