アニメーターの労働問題講演会(2020年9月5日)

 

1.はじめに

 

 2020年9月5日(土)午後3時から午後5時にかけて、7月集会9月企画の一環として、「アニメーターの労働問題」についての講演会が開催されました。本講演会は新型コロナウイルスの影響を受け、オンラインで開催されました。

 本講演会は、「アニメーターの労働は『ブラック』と聞くけど、実態はどうなのだろう?もしブラックだとしたらその原因は何で、解決策は何が考えられるのだろう?」そういった疑問を持った有志の司法修習生が企画した講演会です。

 講師として、現役アニメーターでJAniCA理事の徳野悠我(とくのゆうが)さん及び労働問題に詳しい弁護士の大久保修一(おおくぼしゅういち)さんのお二方にご参加いただきました。

 

 本講演会の構成は以下の通りです。

(1)イントロダクション

(2)徳野さんご講演 「アニメーターから見たアニメーターの労働問題の現状」

(3)大久保さんご講演 「弁護士から見たアニメーターの労働問題の現状」

(4)講師によるクロスディスカッション 「原因と解決策」

(5)質疑応答

 

 それでは、実際の講演会の内容を見ていきましょう!

 

 なお、本記事は、この講演会の様子を、主催者である7月集会の司法修習生の感想も交えつつ要約したものであり、全ての内容を再現したものではありません。更に詳しく知りたいという方は、下記に当日の動画のURLがありますので、そちらをご覧ください。

 

2.イントロダクション

 

 私たちがアニメーターの労働問題について学んでいく中で、私たちは、視聴者の方に講師のお話を聞く前にこれだけは押さえておいてほしい!という2つのポイントがあることに気づきました。

 それは、①「アニメーター」と一言でまとめることは難しいこと、②アニメ業界の構造を大まかに押さえることがアニメーター個人の労働問題を考える上でも重要なこと、の2点です。その2つのポイントについて、講演の冒頭で司法修習生から簡単なイントロダクションを行いました。

 それでは、具体的にそれぞれのポイントの中身を見ていきましょう。

 

(1)ポイント① 「アニメーター」の多様性

 

 「アニメーター」と呼ばれる仕事をさらに細かく見ていくと、その中には「原画マン」、「動画マン」等といった人たちがいます。

 「原画マン」は原画、つまり、アニメの動きのキーとなる絵を描く仕事をしています。この仕事の報酬は「1カットあたり数千円(1カットとは背景が切り替わるまでのアングル一つ)」のように定められます。1カットの長さや構成は様々で、多くの絵が必要な尺の長いカットを担当する場合、作業時間が伸び、時間当たりの報酬が低くなります。

 「動画マン」は動画、つまり、原画と原画の間の細かい動きを埋める絵を描く仕事をしています。新人アニメーターの主な仕事は、この「動画」の仕事です。この仕事の報酬は「絵一枚につき200円程度」のような出来高制です。しかし、新人アニメーターは一枚の絵を仕上げるのにも時間がかかるので、報酬は低くなります。

 アニメ制作には「制作進行」のような、絵を描く以外の仕事もあります。

 「制作進行」は制作スケジュールや作業環境、作品のクオリティの管理、原画や動画の回収、進捗伺い等、他のセクションと関わりが多い仕事です。その仕事はアニメ制作の全工程を支え、重要かつ多忙です。

 このように、一言で「アニメーター」といってもその中には様々な仕事があり、その報酬形態、契約形態等も様々です。また、制作進行のように厳密にはアニメーターではありませんがアニメ制作に密接にかかわる仕事も存在します。そのため、「アニメーター」と一言でまとめてアニメーターの労働問題を分析することは困難なのです。

 

(2)ポイント② アニメ業界の構造

 

 私たちは、アニメーターの労働問題を分析するにあたり、アニメ産業がいかなる構造をしているかも調べました。業界の構造に問題の原因があるのではないか?と考えたからです。では、アニメ業界の構造は一体どのようなものなのでしょう。ここでは極めて簡略化してお伝えします。

 まず、「製作委員会」を構成し出資を集めます。次に「製作委員会」から発注を請けて制作会社はアニメ制作に取り掛かります。その際、制作会社は、アニメーターに原画や動画等の仕事を発注し、アニメーターはその仕事の対価として報酬を得ます。制作会社はアニメーター等によって作られたアニメを成果物として製作委員会に渡し、製作委員会はこのアニメから収益を得ます。そして、製作委員会は得られた収益の一部を再び別の新しいアニメの制作に投資する……というような構造です。

 「製作委員会」、「制作会社」、そして「アニメーター」。それぞれの単語は聞いたことがあっても、それぞれの立場がどのようにつながっているかはいまいち分からないという方も多かったのではないでしょうか。

 

3.徳野さんご講演 「アニメーターから見たアニメーターの労働問題の現状」

 

(1)現役のアニメーターさん

 

 イントロダクションに続いて、現役のアニメーターである徳野悠我(とくのゆうが)さんに「アニメーターから見たアニメーターの労働問題の現状」というテーマで講演をしていただきました

 徳野さんは,「天気の子」,「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」,「攻殻機動隊ARISE」の原画や,「僕だけがいない街」,「銀の匙 Silver Spoon」の作画監督などを担当している方で,この他にも多数の作品に参加している現役アニメーターです。

 そんな徳野さんは,今回,アニメーターの労働問題についてどのように語ってくださったのでしょうか?チェックしていきましょう。

 

(2)アニメーターって,本当に長時間労働で低賃金なの?

 

 一般的に,アニメーターは長時間労働で低賃金だと言われていますが,実際のところはどうなんでしょうか。徳野さんは、アニメーターの平均年収・労働時間・月間平均休日日数等の統計データを参考にしつつ語ってくださいました。

 データを見たところ,平均年収は,全産業平均よりも多い部分もあり,労働時間も若干長いかなと思う部分はあるけどそれほどでもないし,平均休日は,まあ少し少ないかなと感じるぐらいだな・・・。あれ,もしかして,実際のところアニメーターって,必ずしも長時間労働・低賃金ではないのでは・・・?

 そうなんです,まさにその通りなんです。では,なぜアニメーターに長時間労働・低賃金の印象があるのでしょうか。統計データを見ると,若者アニメーターの平均年収が異様に低いため,ここだけにスポットがあたり,世間的にそのような印象になってしまったのではないか、と徳野さんは言います。

 

(3)アニメ業界内部の人間が感じるアニメーターの労働問題

 

 では,アニメーターの労働問題など存在しないのではないか,と思うかもしれませんが,そんなことはありません。業界内部の人間だからこそ感じる労働問題があるのです。具体的には次の4点です。

 

 ① 若手の育成,生活の保障がなされにくい

 20~24歳および25~29歳のアニメーターの平均年収は,それぞれ154.6万円,245.7万円と,各世代の全産業平均値より100万円も低く,かなり苦しい状況です。

 また,性質上フリーランスが多いため,先輩世代も若手の教育にかける余裕は,あまりないそうです。出来高制が主な職業なため、若手を教育する余裕が持てない現状があるようです。

 

 ② 生活の不安定

 アニメーターは,その多く(8~9割)がフリーランスや自営業で出来高制で働いています。そうなると,安定した収入という保障がないため,生活が不安定なものになりがちです。また,出来高制ゆえに,労働時間=収入という公式が出来上がってしまい,収入を得るために労働時間が長時間化し、日々の生活の時間的余裕を失ってしまいます。もちろん,病気やけがをして仕事ができない場合には,その間は無収入になってしまいます。生活の安定保障については,なかなか難しい状況が続いているといえます。

 さらに,描いた絵の単価は,新人であろうが中堅であろうが,基本的には同一であるため,腕のいい人やクオリティーを求めようとする人ほど,自身の首を絞めることになってしまうそうです。う~ん,なんともいえない理不尽さを感じますね・・・。

 

 ③ 契約形態の不明瞭さ

 フリーランスで働くアニメーターは、制作会社と業務委託契約を締結することがしばしばあります。しかしながら,アニメーターの半数以上は,自己の契約内容について説明を受けなかったり,契約書を取り交わさなかったり,わからないという状況です。アニメーター一人一人の意識改革も課題となってきそうです。

 

 ④ アニメ制作に求められる止まらない高クオリティー化

 近年アニメ制作に3DCGが活用されることが多くなり,それに伴う制作費も増え,求められるクオリティーに対してかけられるコストが足りてない状態です。このように制作工程が増え,制作費も分散されると,アニメーターの収入にも影響が出てきます。そして,これらのことを原因として、アニメーターが最も恐れる「あれ」が生じます。そう、いわゆる「作画崩壊」です。

 な,なるほど・・・,作画崩壊は,アニメーターさんの仕事がめちゃくちゃ大変になってしまったから起きたことなのか・・・・。これからは,温かい目で見守っていかなければ・・・・!

 

 このように,徳野さんには,アニメーターという当事者の立場から見たアニメーターの労働問題の現状について話していただきました!

 

4.大久保さんご講演 「弁護士から見たアニメーターの労働問題の現状」

 

(1)アニメーターの労働問題にかかわる弁護士

 

 徳野さんのご講演に続いて、大久保 修一(おおくぼ しゅういち)弁護士に、「弁護士から見たアニメーターの労働問題の現状」というテーマで講演をしていただきました。

 大久保さんは、労働者側の労働問題を特に扱っている弁護士であり、アリさんマークの引越社事件(2015年~2018年)、大学生のブラックバイト事件(2016年~2017年)等、ニュースにもなった労働事件を取り扱っていらっしゃいます。大久保さんは、つい先日まで、アニメ会社スタジオ4℃元社員の同会社に対する未払賃金請求事件の原告代理人を務めていたそうです。この訴訟は、記者会見も開かれ、話題を集めました(先日和解成立とのこと)。

 では、このようにアニメーターの労働問題に先端的に取り組んでいる大久保先生はどんなお話をしてくださったのでしょうか?

 

(2)アニメーターは法的にはどんな立場で働いているのだろう?

 

 まず、大久保先生が担当した事件を簡略化した事例を用いて、アニメーターの労働問題について見てみましょう。この事例で登場するアニメーター(以下、「Aさん」と呼びます)は、制作進行という立場です。この制作進行という仕事は、前述のとおり厳密には「アニメーター」ではありませんが、同じアニメ制作の現場で働く者という共通点があることから、アニメーターが働いている状況を知る上でも参考になるのです。Aさんは、制作会社に所属し、労働条件通知書といったものを交付されることなく、日々8時間以上働いていました。そして、給与明細には月給○○円としか書かれず、残業をしても残業代は払われていませんでした。Aさんは、入社からしばらくした後、会社に対して残業代を請求したところ、労働条件通知書が交付され、そこにはAさんの働き方には裁量労働制が適用されており、月給には45時間分の固定残業代が含まれているという内容が記載してありました。勿論Aさんは初めて聞いたことです。

 この事例で、労働法上どのような問題が考えられるでしょうか?まず、Aさんの立場はフリーランスなのか、それとも労働法の保護が及ぶ「労働者」なのか?次に、労働時間の規制があるのか?固定残業代とは何か、有効なのか?そして、最低賃金の規制はAさんに及ぶのかといった様々な論点が考えられます。  

 Aさんの事例は制作進行という立場でしたが、アニメーターはどうでしょうか?アニメーターの半分は「フリーランス」として働いています。そもそも「フリーランス」とはどのような人なのでしょうか。

 「フリーランス」とは、「一般に、自らの技能を提供する個特定の企業や団体、組織に専従しない、個人事業主のこと」をいい、労働や雇用契約ではなく、「業務委託」、「請負」契約という形になります。具体的にいうと、弁護士やウーバーイーツの配達員、プロスポーツ選手のような人々です。

 

(3)フリーランスの怖さ

 

 多くのアニメーターが、フリーランスという働き方をしていることがわかったわけですが、このような働き方をしているとどのような問題があるのでしょうか。実は、フリーランスの働き方には、労働法の適用がないのです。そのため、労働時間に規制がなく、健康保険にも入れず、賃金保障もないというとても不安定な地位に立たされてしまいます。フリーランスにも独占禁止法や、下請代金支払遅延等防止法等の規制はありますが、まだまだ不十分なのです。

 さらに、アニメーターの場合には、仕事の単価が安いために長時間働く必要がある場合や、個人の仕事をつなぐ制作進行として長時間の待機が必要となるなど、長時間労働につながりやすい環境があります。そして、企業の側も、裁量労働制を悪用し、残業代を固定給として支払いを免れようとしているのが実情です。このような状況に多くのアニメーターは置かれているため、長時間働いて生活費等を稼ぐ必要が生じてしまっています。

 

(4)まとめ

 

 アニメーターは、その多くがフリーランスという形で働いており、企業側も残業代等を支払わないようにしているという現状があります。法的観点から、アニメーターという働き方を見ると、その多くがフリーランスという働き方をしているために労働法の保護等が及ばず、不安定であり、かつ長時間労働が強いられている状況です。

 しかし、アニメーターの全員を制作会社等が雇用して労働者にすればいいというわけではありません。この点については、この後のクロスディスカッションでも議論しますが、様々な制作会社で、様々な作品に携わってキャリアアップを目指すには、一つの会社に縛られないフリーランスという働き方が望ましいという側面もあるのです。法的な観点からいえば、アニメーターの働き方には不安定な部分が多くありますが、一概に雇用契約を結べばいいのではなく、アニメーターのキャリア形成のために自由に働けることの重要性も考慮して解決策を探す必要があります。

 

 以上が大久保さんの講演のまとめですが、ここでは、昨今話題の「フリーランス」という言葉が出てきました。アニメーターの労働問題を考えるにあたっても重要なキーワードなのですね。また、単純にアニメーターが雇用契約を結べばすべて解決するという問題ではないのが何とも難しいところですね・・・。どういった解決策が考えられるのだろう・・・と思った方は次のクロスディスカッションへ!

 

5.講師によるクロスディスカッション 「原因と解決策」

 

 ここまでの講師のお二人のご講演では、アニメーターの労働問題の「現状」にフォーカスして語っていただきました。ここでは、講師の徳野さん、大久保さんに、アニメーター、弁護士というそれぞれの観点から、アニメーターの労働問題が生じている現状の「原因」と「解決策」についてディスカッションしていただきました。

 

(1)原因について

 

 まず、徳野さんは、若手である20代の動画マンが置かれている経済的困難という現状に危機感を示しました。そして、その経済的困難の原因として、「雇用形態、契約形態の不明瞭さ」を挙げています。

 

 この点、大久保さんは、制作会社側がフリーランスという雇用形態をアニメーターに提示する要因として、制作会社側の経済的利点を指摘します。制作会社が、アニメーターと、フリーランスという形で契約をすると、法律上、アニメーターは「労働者」と評価されにくくなります。そのため、制作会社側は、社会保険料の支払いを免れることができます。この点が、制作会社側の大きなメリットであると指摘しています。

 

 これに対し、徳野さんは、アニメーター視点で、アニメーターがフリーランスを選択する理由として複合的に絡んだ2点を挙げています。1点目は、そもそもアニメーターが、フリーランスなどの契約形態の違いやその内容について、十分把握できていないことです。各契約形態の違いが十分把握できていないため、自然と、周りもそうだから、とフリーランスを選択するとのことです。2点目は、各制作会社とフリーランス以外の契約を結ぶと、その会社の仕事しかできないイメージがあり、そのため、自由に自分の好む作品制作に携われるフリーランスという選択肢をとるとのことです。

 

 大久保さんは、フリーランスという契約形態がアニメーターに利点があることには、理解を示します。ただ、原画や動画の制作は、制作会社の指揮監督下にあります。それは実質的には雇用と変わりません。そのため、フリーランスといえども、その働き方の実質から、雇用契約か否かを判断すべきとの議論がありました。

 

(2)解決策について

 

 解決策について、講師のお二人から次のような議論がありました。

 

① 働く人の知識、交渉力を高めること

 まず、アニメーター自身が、契約内容を知る・学ぶこと、それを通じて、自身の交渉力を高めることが解決策の一つです。また、交渉力を高めるためには、アニメーター自身の技術力が必要です。そのため、JAniCAも技術力講習などを行っています。

 

② 制作費において動画の単価を上げていくコンセンサスを形成できるようにすること

 解決策として、考えられる2つ目は、視聴者自身も、アニメ作品を見る際に、どのような労働環境でアニメが制作されたかを意識するということです。確かに、アニメ作品は、その内容から評価されるということが多いですが、内容的に良くても、それがアニメーターの劣悪な働き方によって成り立っている作品があります。そのような作品ばかりを評価すると、結局はいつまでも劣悪な働き方・働かせ方はなくなりません。また、視聴者が作品を見る際に、アニメーターの労働環境を気にかけることによって、業界全体も適正な労働環境下で制作された作品が評価されることに気づき、動画マンの仕事の単価等を挙げるきっかけにもなります。

 

 短い時間ではありましたが、講師のお二人に活発なディスカッションをしていただきました!

 

6.質疑応答     

                             

 講演の最後に行われた質疑応答では以下のようなやり取りがありました。本記事の締めくくりとして、以下質疑の内容を簡略化してお届けします!

 

Q1 (徳野さんに)コロナの影響でアニメーターの働き方は変わりましたか?

 
A  (徳野さん)自分のことに関すると、テレワーク化はしている。2か月ぐらいは完全にテレワークだった。その後はチームを分けて出社する日とテレワークの日を分けたりして回している。

   (JAniCA桶田さん)緊急事態宣言の前後、主だったスタジオだと6割方は完全にテレワークという形になっていたが、現在は徳野さんの言われるようにテレワークの人がいる一方で、実際に出勤してくる人もいるという感じになっている。

 

 
Q2 (徳野さんに)1日の徳野さんの働き方はどのようなものですか?

 
A    2週間のスパンでいうと、だいたい1週目は昼ぐらいに起きて机に向かい絵を書く。大体8時間くらい働いている。2週目に差し掛かる辺りで焦り出して、ベッドと机の往復という形で一歩も家から出ず10何時間と仕事をする。なかなか寝れない状況。

 

Q3  (徳野さんに)働いている中でしんどい、労働環境を改善したいと自身で思ったことはありますか?

 

A    自分は特殊ケースだと思うが、やめたい、すごくつらいとはあまり感じたことない。あまり本人に自覚なく乗り切っちゃってるという感じ。業界に入って15年目だが、初めて絵を動かした時の感動が忘れられず、やってしまっている。

 

Q4 (大久保さんに)雇用契約書や雇用条件等の書面が存在しないアニメーターの労働問題において、証拠収集で気をつけていることはありますか?

 

A   手元にある物を何でも良いから見せてもらう。会社にもまず見せてもらい、もし会社が非協力的なら証拠保全とかの裁判所の手続きを使い会社に書面を出してもらう。全く証拠がないというケースはほとんどなく、大抵は何かが会社には残っているが、全くないならば会社と話し合いをするとともに、本人が一番知っているから本人に聞いて対応する。

 

 

Q5 (徳野さんに)質問者はテレビ局で仕事をしていたことがあるのだが、テレビの業界でも問題が多いのにそれに気づかない人が多い。アニメーターの方でも当事者は労働環境の問題に気づかないのか?

 

A   気づいてない、疑問を持つに至らない。絵を描いたらお金がもらえる、自分の絵が動いたら嬉しいという感覚がある。アニメーターは、自分が描いた絵や仕事がほめられること自体が自分の人間としての存在の根本自体がほめられたと感じてしまうため、労働環境を度外視してでも働いてしまう。成果物を得るのにコストが掛かりすぎるのに、楽しさがあるためか感覚が麻痺してしまう。周りの人もやっているからいいやと思ってしまう。

 

Q6 (徳野さんに)やりがい搾取という言葉は、現場の感覚からアニメーターに当てはまりますか?

 

A  世代で別れる。30代半ば以上の人なら、自分で選んだ仕事なので嫌ならやめれば良いと思う人もいると思うが、それ以下の年代の人なら働かされている、会社に対してそれはおかしいと思う人も多く、そうした人たちがやりがい搾取だと感じていると思う。  

 


Q7 (大久保さんに)アニメーターの労働環境の保障・雇用の安定とキャリア形成・幅広い作品の経験を両立させる良い契約形態はありますか?

 

A   雇用契約の中でも、この時間帯はこの作品の作業をしてという形で時間を管理する者がある一方で、ある程度時間を使って良いから、この時間にこの作品作って、他の仕事も会社の許可受けたなら参加して良いと自由にさせることもありうる。雇用契約をベースに柔軟にやることは可能。

 


Q8 (大久保さんに)家の中で労働している人達の労働管理はどのようにすべきでしょうか? 


A     時間管理としては、労働者から時間を報告させて管理するものもあるが、web会議のシステムをつけっ放しにして、何時から何時まで机の前にいたかを会社がチェックする形のものもある。しかし、この場合、家の中が会社に見られてしまい、プライバシー等が問題になる。家でなければだめというのでなく、駅ナカとかのスペース等他の働きやすい所で働く形でも、ネットを使えば時間管理できるので、それを使えば良いと思う。

 
  

Q9 (徳野さんに)労働環境が原因でアニメの質に影響が出ていることはありますか?

 
A  (徳野さん)具体的な会社としては京都アニメーションとP.A.WORKSがアニメーターを社員雇用して賄っており、それらの会社はクオリティが高い。労働環境がクオリティに影響する関係にあると言えるかもしれない。

  (JAniCA桶田さん)雇用環境が良いことは必要条件であっても十分条件でなく、雇用環境が良くてもクオリティでは高い評価受けない会社も現に存在するので難しい。ただ一般論として雇用関係が良い所は人が集まり良い作品ができ、一方で悪い所は人を集められなくなっており、雇用環境が悪いとちゃんとした作品ができなくなる確率は高まっている。

 

 

Q10 (大久保さんに)アニメーターは最低限どのような法知識を知っておくべきか?

 
A  最低限、働くということに法律の適用があること、自分が生活している前提として契約が成り立っていること、契約をしていることを理解することが一番大事だと思う。

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